看護師の転職はパソナメディカルTOP » アソシアカフェ(AssociaCafe) » Asssocia Feature 井上智子(いのうえ・ともこ)教授インタビュー
『今求められるキャリアアップとは 井上教授インタビュー』



スキルアップとキャリアアップとの関係はどの様に捉えたら良いのでしようか?

 スキルアップは自分の能力の向上で、技術や知識や増やす生涯学習、自己研鑽ですが、キャリアアップは自分の職業人生の中での積み重ねであって、通常肩書や役割をあげたり、専門性を高める場合に使います。今、さまざまな病院で注目しているのはキャリアアップのシステムについてです。これを病院の側でもちゃんと作るという気運が高まってきました。

 その背景には7月1日に60年ぶりの保助看法の改正があります。 改正内容は次の3つの柱です。①保健師と助産師の教育が6か月から1年に延びたという事、②養成所に看護系4年制大学が明記されたこと③看護師の卒後研修が努力義務に明記された事です。医師の卒後研修が予算化されシステム化されていることから、次は看護師の卒後研修への動きと思っておりましたが、結構年数がかかったというのが実感です。

 しかし、今回、保助看法で明記されたことは非常に大きな前進になりますし、遠くない将来で卒後研修がきちんと必修化されると思います。そうなれば今までそれぞれの病院の自助努力に過ぎなかったことが法律や監督官庁のもとで行われるのは歴史的な動きだと思いますし、これから必ず変わっていくと思っています。



臨床実務レベルをある水準にまで一定にするということにもなりますね。

 そうですね。今まで、病院や個人に任されていた研修制度が、システム化されるという事です。内容、到達度、方法などはこれから具体的に検討されるということになると考えます。



今回の法改正により、カリキュムが標準化され、どこの病院に行っても同じような内容の研修制度になっていくためにガイドラインが出来るという理解で良いでしょうか?

 その前に、何をどこまでやるかという事を見直す事になると思いますが、即ち卒後研修だけの問題ではなく、その前の基礎教育との連携や継続性という体系の中で行われることが大切になります。今まで病院側は学校での教育が実習が足りないと言い、学校側はいろいろな事をするにしても患者様や病院側の同意書を取らなくてはならなかったり、法的な問題などがあり、なかなか出来ないことが多くありました。看護師免許をとってから現場で教育してほしい等についても両者の間には隙間や挟間が多くありました。今後は、そういう問題も継続性をもって検討されますが、ガイドラインや内容はその先になると思います。本件については、体系的に国の予算が今後どう手当てされるかという事が焦点となると考えます。



今回の改正による見直しは基礎教育、実習制度から卒後研修まで一貫して体系的に行われる歴史的第一歩ですね。

 はい。なるべくしてなったというものの結果としては遅かった感じがします。医師は毎年7,800名位、新任として社会に出てくるのに対して、新人の看護師は50,000人と人数が多いこともあり、予算手当が厳しく、なかなか実現出来なかったと思います。医療安全と、複雑な現場に対応するためには卒後研修が不可欠だと思います。どんな会社でも3か月や半年は入職後研修をするのに、看護師は4月1日から新人にも拘わらず、ベテラン看護師と同様に頭数のひとりとして扱われてきました。その結果、新人が出来ない4月、5月の夜勤分を先輩看護師がカバーしてきたのが実情です。

 そのため、先輩看護師が疲弊して、6月頃には辞めていくケースも随分見受けられました。これは病院、看護部、看護師個人がバラバラの状態の中での自助努力を強いられていたという事です。これからキャリアアップを望む方は、新しいシステムに乗って充分な力を蓄えて、自由な働き方を選ぶことが可能になってくると思います。



キャリアアップについては、病院側が主体で、スキルアップは自分が主体と考えて良いでしょうか?

 そうとも言えますが、究極的には両方が主体です。 新人看護師にとって基礎教育を継続していく卒後教育が必要です。基礎教育も主体は学校側とは言え、学ぶのは学生本人であり、教育の場である学校が職場に移っただけのことを十分認識して頂きたいと思います。



看護師は転職が多い職種になっておりますが、どのようにお考えですか?

 それぞれの事情があると思いますが、看護師の評価を新人であろうがベテランであろうが7対1などの頭数で勘定をしている事が、原因のひとつにあります。か、と言って、同じ病院にいるのがベストであるという時代でもないですね。キャリアアップのためのローテーションという発想もあります。これは、キャリアアップと重なるところがあります。



スキルアップ後の査定が難しいのですが、成長度など我々が判断できる方法はありますか? 病院側との要求に応じられる一定の物差しがあると良いのですが。

 難しいですね。経歴を含めた総合的判断でしょうね。能力の問題だけでなく、職場との相性、文化やコミュニケーション問題もあります。自分をどれだけ客観視できるかも大切だと思います。一定の物差しはあれば便利でしょうが、中々簡単に作れるものでもなく、病院の独自性や特徴も重要でしょう。別の観点から見ると需要と供給のバランスになるので、将来はそうありたいと思いますが、当面は難しいと思います。

以下は季刊誌AUTAMN(秋)号掲載のインタビュー内容になります。

働き始めてからのキャリアップとは一般的にどのような事が考えられますか?

 未来のデザイン図(ライフデザイン)は、病院側もこうあってほしいという希望はあると思いますが、自分がどうしたいのか、どういう職業人生をおくりたいのかを個人が考えるのが重要だと思います。むしろこれからは自分にあったプログラムを選択してほしいと思います。



漠然とスキルアップしたい、キャリアアップしたいと願っている人にアドバイスを一言いただきたいのですが。

 派遣の場合は、即戦力を期待されているために、一定のスキルを備えたスタッフが求められますし、またそのスキルも高い程重宝されていると思います。 登録前に出来るだけ多くの研修を受けて、効率的にスキルアップのための努力を積み重ねることが必要でしょうね。



派遣で即現場で働きたい方には派遣前でのスキルアップを勧め、また、職業紹介の希望の方には受け入れ先のキャリアアップシステムをよく理解して、そのシステムに合うところを選んで下さいという事でしょうか?

 まさにそのとおりだと思います。復職に関してブランクの点で本人が不安な部分をカバーしたい場合は、看護協会やナースバンクなどにある「復職支援のためのプログラム」がありますので、そこで先ず肩慣らしをした方が良いと思います。復職の場合、本人の希望勤務形態や受け入れ側の状況(再教育を含めて職場がやってくれる場合)により異なってくると思います。



スキルアップには、どのようなものがありますか?

 単発の講習会や勉強会に参加したり、大学や大学院に入学・編入したり、認定看護師・専門看護師などの資格取得を目指すための学習は、キャリアアップであり、スキルアップでもあります。ですから、両者の関係は本来分離しているものではありません。また、専門看護師などになりたい場合は、スキルアップとキャリアアップの両方の能力が伴わないと不自然で、実現不可能だと思います。そこでは、ご理解のとおり、キャリアアップとスキルアップは補完関係と言えます。



先生が理事を務めていらっしゃるクリティカルケア看護学会ではいかがでしょうか?

 こちらでは、資格を持っている、持っていないに関わらず、看護の分野で働いている看護師たちが、毎週、単なるスキルアップだけでなくて、学術的に交流を持つ目的で集まっています。



看護師の皆さんは勉強に対する熱意も高く、キャリアアップのために病院を代わるとしたら、一番進んでいる職種かもしれませんね。

 病院が看護師をどう育てているかは重要な要素です。きちんとした育成プランがある病院だと、働く側は安心して働けますので、病院選びは重要でしょうね。「マグネットホスピタル」という言葉がありますが、良い病院は良い看護師がどんどん集まります。



キャリアアップを含めて離職率の高いところは、若い人と入れ替えているという戦略的なこともありますね。

 極端に高い離職率も疑問ですが、低いのも新陳代謝が悪く好ましくありません。適度に入れ替わるのが必要だと思います。看護師はまだ売り手市場なので就職しようと思えば、どこかに仕事を見つける事が可能です。その中で派遣を選んでいる人は能力や人柄が問われ、自己研鑽が求められる厳しい立場に挑戦をしている勇気のある方だと思います。



キャリアアップのためのカリキュラムと本人のライフプランをどう組み合わせるかが大きな問題ですね。

 そのとおりです。現実には将来の事を見据えるのは難しく、とても大変ですが、少なくても3年から5年のプラン程度は描いて対応していく事が良いと思います。学校側も卒業前に、3年から5年のプランを描かせるような指導をしていますが、学生たちは若いだけに、あれもしたいこれもしたいと考えて、明確に固まるには時間がかかりますね。



今日はお忙しい中、有難うございました。